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保険の白い被せ物(CAD/CAM冠)が全ての大臼歯で適応可能になったが問題あり
コラム
2023/12/10
令和4年12月から、保険のCAD/CAM冠で第一大臼歯・第二大臼歯・第三大臼歯(親知らず)の単独冠が適用可能になりました。
簡単に言えば全ての奥歯を白っほい樹脂系の被せ物を被せられるようになったのです。(正しくは白ではなくアイボリーの被せ物)
今までは、第二大臼歯・第三大臼歯は保険治療では銀歯でした。また、第一大臼歯の場合、上下左右の第二大臼歯の4本が存在し、しっかりと噛み合っている場合は保険のCAD/CAM冠は使えましたが、その適用範囲外は銀歯が基本でした。(金属アレルギーの患者様は例外あり)
その新しいCAD/CAM冠材料は、PEEK(ピーク)材と呼ばれています。正式名称は、「ポリエーテルエーテルケトン」と言いその頭文字をとりPEEKと呼ばれているのです。
このPEEK材料はすでに工業・産業分野で金属の代用品と使用されており、医療機器やカテーテルや体内インプラントなどの生体材料もすでに使用されており実績のある材料です。
歯科の分野でも、自由診療の材料としてすでに一部で使用されておりました。
奥歯(大臼歯部)はかなり強い噛み合わせの力が掛かるので、今までの保険のCAD/CAM冠材料では、冠の破折の可能性を考える必要がありましたが、
新しく保険適用されたPEEK材は、強い噛み合わせの力が掛かっても材料自体がたわんで破折しにくいという特徴をもっています。
しかし、私自身はこのPEEK材を患者様の大臼歯に使用するかどうかは、まだ決めていません。
なぜなら、このPEEK材には問題点があるからです。
この材料の利点はたわんで割れにくいということです。
逆に言うとこのたわんで割れにくいということがこの材料の欠点にもなり得るのです。
どういうことかと言うと、削った歯と被せ物はレジンセメントという材料で接着しています。このレジンセメントに応力がかかり、セメントが破壊されPEEK冠が脱離する可能性があります。
また、このPEEK材は、今までの保険のCAD/CAM冠材料より物性は小さいが同等の摩耗性(噛み合わせのすり減り)があるということです。
ということは、長期的にみると奥歯の噛み合わせの崩壊に繋がる可能性があるのです。
また、顎関節症の原因にもなり得る可能性もある。(咬合高径の低下)
理由は、一番奥歯の部分で噛み合わせ部分の摩耗性が高いと噛み合わせが徐々に低くなり、顎関節にストレスが掛かり問題を起こす可能性が高くなる。
もしこのPEEK材のCAD/CAM冠を使うとしても、以前のように「一番奥歯は噛み合わせがすり減りにくい金属の被せ物で修復しなければならないという保険治療条件の縛りをなぜ解除したのか」私には意味がわからない。
現状、金属の値段が高騰し、国も歯科医療費の削減の為に金属の代用品を使えるように移行しているのだと思うが、一歯科医師の立場から、噛み合わせを考えると今後、保険治療で多くの問題が起こってくる可能性が高いのではないかと私は危惧しています。
また、審美性を考えると、PEEK材の色は白ではなくアイボリーの一色です。
なので、白い被せ物ではなくアイボリーの被せ物になります。
上記の問題点から、当院では患者様が保険治療でPEEK材の被せ物を希望されても今はお断り致します。
もっと臨床データーが蓄積され、問題点の解決方法が確立されてから当院の患者様に提供するかどうか判断させて頂きます。
私の意見では今のところ、奥歯も保険で全て白っぽい歯ができるから、全てやり替えましょうというのは、要注意です。
患者様自身が、メリットとデメリットをよく知り自分で判断し、この治療を主治医の歯科医師に任せるかを決めるしかないのではないのでしょうか。
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